鳥取地方裁判所 昭和38年(ワ)148号 判決 1967年9月05日
主文
1、被告等は原告に対しそれぞれ各一一万六、九五二円を支払え。
2、被告等は原告に対しそれぞれ各八万八、三七六円に対する昭和三四年五月三〇日から右各支払済にいたるまでの日歩五銭の割合による金員を支払え。
3、訴訟費用は被告等の負担とする。
事実
原告は、主文同旨の判決と仮執行の宣言を求め、請求原因および主張として次のとおり述べた。
(請求原因)
(1) 原告は昭和三一年一一月一三日頃訴外西橋喜代雄に対し手形貸付の方法で九九万円を、弁済期を昭和三二年一月一一日、期限後の損害金は日歩五銭と定めて、貸付けた。
(2) 被告等先代河口市助は、被告得易知の代理人として同日頃原告に対し、右貸付に基づく右西橋の原告に対する債務につき連帯保証した。
(3) 右市助は昭和三四年四月二三日死亡し、被告等は子として右市助の財産を八分の一ずつ相続した。
(4) 右西橋は右の弁済期を徒過したが、右元金の弁済として昭和三二年二月二五日五万円、同年五月六日一四万円および九万二、九九〇円を支払い、且つ、原告は同人に対する強制執行の結果昭和三四年七月一日右の損害金の一部の弁済をうけたので、結局原告は同人に対し残元金七〇万七、〇一〇円と昭和三四年五月二九日までの損害金のうち少なくとも二二万八、六〇七円との債権を有する。
(5) 右市助は、本件貸借の連帯保証につき被告得易知の代理人たる権限を証明することができず、且つ、同被告の追認もえなかつたものであるから、民法一一七条により、同被告が負うべき前記連帯保証債務と同一の債務の履行の責に任ずべきものである。
(6) よつて、原告は請求の趣旨のとおり、右市助の相続人たる被告等に対し、それぞれ右七〇万七、〇一〇円と右二二万八、六〇七円との合計九三万五、六一七円の八分の一ずつの金員の支払、および右七〇万七、〇一〇円の八分の一ずつの金員とこれに対する昭和三四年五月三〇日から右各支払済までの日歩五銭の割合による金員の支払を求める。
(原告の主張)
被告の後記(2)の過失の抗弁は否認する。
被告等は、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、答弁および抗弁として次のとおり述べた。
(答弁および抗弁)
(1) 原告主張の請求原因事実(1)、(2)は不知、同(3)は認める、同(4)は不知、同(5)のうち、市助がその代理権を証明しえなかつたことは認める、他は否認する、同(6)は争う。
(2) 仮に市助が被告得易知の無権代理人であると認められるとしても、原告は過失によつてこのことを知らなかつたのであるから、本訴請求は失当である。すなわち、市助が持参した印鑑証明書の年令の記載により、市助が得易知でないことは容易に分るのに、原告は、漫然と市助を得易知なりと誤信したし、仮に原告において市助が得易知の父親ということを知つていたとしても、その一事をもつて市助に代理権ありと信じ、得易知にそのことを確かめなかつたことは原告の過失である。
(証拠関係)(省略)